日本の農業は従事者の減少、高齢化が深刻化など大きな課題を抱えています。一方でテクノロジーの進化による省力化、AIを利用した生産性の向上が進んでいます。特に農業ドローンは進化がめざましく、活用が広がってきました。これまで農家さんが自ら動力噴霧機などで、酷暑の中で数日にわたって行っていた散布作業をドローンなら数十分で完了できます。広い圃場では農業用ヘリコプターの活用も行われていますが、パイロット不足などにより必ずしも適期防除ができないことや、中山間地での活用に課題がありました。日本のような山の多い地形では、中山間地などでも多く水稲農業が行われており、ドローンによる散布が一気に浸透してきています。小型でバッテリー飛行が可能なドローンは注目されており、農薬散布はもちろん、肥料散布、播種や受粉、物資輸送、圃場のセンシング、ハウスへの遮光剤散布などにも活用されています。
ドローンの普及が進むにつれて、利用者や登録機対数、事業者数は急増し、導入した農家では生産性の向上が立証されています。これから導入したいとお考えの農業従事者、地域活性のためにサポートしたいという企業などが正しく理解し、ベストな機体選びはどうすれば良いのか?初歩的な知識から、おすすめの機種、それぞれのメリット、デメリットをご紹介します。
そもそも農業用ドローンって?
一般に「ドローン」とは、マルチローター型(3つ以上のローターを搭載した回転翼機)の無人航空機のことを言います。カメラが搭載された空撮用ドローンが有名ですが、農業用ドローンは薬剤を積むタンクや散布ノズルが搭載されています。羽が回転し、下に風を吹き付けることで揚力を生み飛行します。農業ドローンはこの風(ダウンウォッシュ)を利用して、ノズルから噴霧された液剤を作物に吹き付けています。ドローンの操作や散布は送信機で行いますが、ほとんどの農業用ドローンは自動飛行機能を備えており、取り扱い方法を理解していればプロと同じように均一な散布が可能になっています。
ドローンで散布して効果はあるの?
ドローンでの農薬散布は農薬約取締法で定められた基準をクリアした薬剤に限られます。たとえば、通常の地上散布で1000倍希釈のものをドローンでは8倍希釈の高濃度で散布します。水稲防除の場合は1反あたり0.8Lなど、対象作物や希釈倍率、散布回数なども厳格に定められています。このため適した薬剤を適期にムラ無く散布すれば、効果は実証されています。またきちんと散布すれば、どんなドローンで散布しても薬剤の効果に違いはありません。
農業用ドローンに資格は必要?
すべてのドローン(100g以上)は航空法で規制されています。また操縦者(パイロット)や機体も登録が必要ですので、購入や飛行には一定の手続きが必要になっています。2022年12月から国家ライセンス化されましたが、このライセンスをを取得しても農業用ドローンは操縦できません。農業用ドローンの場合は、飛行する機体の各講習団体で行われている講習を受講し、座学と操縦試験に合格する必要があります。初心者の方であればおおむね費用はおよそ20〜30万円、日数は5日前後となります。また基本的には機体ごとの資格になるので、A社のドローン資格があってもB社のドローンは操縦できないことになっています。
導入コストの考え方
見た目は似たようなドローンでもそれぞれに特徴があり、一概にどの機体が良いとは言えません。価格も安いものは60万円以下のものから、高いものは500万円を越えるものまで。もちろん安いに越したことはありませんが、見かけの価格で選ぶのは非常に危険です。圃場や作物に適しているかはもちろんですが、運用のしやすさ、メンテナンス性、必要バッテリー本数、保証、耐用年数、ランニングコストなどいくつかの要因を踏まえたコスト計算が必要です。また補助金の利用で、実質半額で購入できることもあるので検討の際にはしっかりと確認しましょう。
タンク容量は大きいほど良い?
農業用ドローンのほとんどが搭載したバッテリーの電力で飛行します。長く飛行できるバッテリーほど大きく、重くなりす。また農薬などを入れるタンク容量は大きいほど広い面積に散布できますが、重量が大きくなり飛行時間は短くなってしまいます。つまりタンク容量と飛行時間はトレードオフの関係にあります。どのメーカーもタンク容量の大きさをうたっていますが、バッテリーはおおむね1町歩の飛行を目安に設計されているものが多いようです。1日に何町歩も散布する場合は予備バッテリー数本以上用意し、発電機を使いながらの運用になります。バッテリーも1本10〜20万円ほどしますので、運用にあった機体選びが重要になります。
大型機のメリット・デメリット
タンク容量30Lなどの大型機は農業用ヘリコプターを活用してきた地域などで活躍しています。また小型機にくらべてさまざまな機能も搭載されており、散布幅も広いため、広大な圃場への散布にはおすすめできます。しかし大きいが故のデメリットも。まず機体そのものが高額であること。運用にかかるコストが大きいことが上げられます。ドローンを含む機材の運搬にはハイエースなどの車輌が必要ですし、現場での作業には3名以上が必要になります。広い面積に対応するために薬剤や水、バッテリー7〜8本、充電器、発電機なども積むため、実際には車輌2台で運用する事が多くなります。また高機能なため飛行前に細かい設定が必要となり、飛行するまでの準備に手間が掛かります。さらに終了後の洗浄などにも時間が掛かります。
小型機のメリット・デメリット
タンク容量5〜9Lの小型機は一般的な日本の圃場に適した機体です。比較的安価で軽トラックに機体などを積んで、2人で運用することも可能です。つまり車両費や人件費も抑えることができます。最近では大型機と同様の機能を持つ機体も多く登場し、中山間地などでも広く使われるようになっています。広大な圃場には不向きですが、準備と片付けも容易で扱いやすさが何よりのメリットです。大型機にくらべると飛行音も静かで早朝からの運用もOK。デメリットとしては、メーカーによってさまざまですが、中には送信機が通常のラジコンで使用するもの(モニターなどがない)や、メンテナンスとサポートが弱い場合があります。
海外機か国産機か
農業用ドローンは世界で活躍しています。海外機は世界標準で設計されており、いろんな場面に対応できることがメリットです。有名なところではDJIやXAGといった中国メーカーで、開発力とコストパフォーマンスに優れています。このため次から次へと新型機が発表されるので、どうしても古い機体へのサポートが手薄になってしまうことがあります。販売代理店が在庫を抱えてしっかりサポートしてくれるかどうかをしっかりと見極めましょう。一方、国産の農業機は海外にくらべて出遅れたましたがその分、日本の農業に適した機体を開発しています。既存機体のバージョンアップが多く、海外製にくらべると一般的に長期間の利用が可能です。メーカーにより価格も機能もさまざまでそれぞれに善し悪しがあるものの、「国産」という安心感も購入のポイントになっています。
おすすめの機体
これまで述べたように農業用ドローンは適材適所なので、一概にこれが良いとは言い切れません。その中でもおすすめするのがNTT e-Drone Technologyの「AC101(エーシーイチマルイチ)」という機体です。国産の小型機でNTTグループが開発しました。「農家さんの声から生まれたマルチコプター」として、日本の圃場に合わせた扱いやすさを設計思想に開発されています。また他の農機具と同じく購入から7年サポートがあり、長く安心して利用することが可能です。機体本体は決して安いとは言えませんが、車輌、人件費、その他の経費を抑えることができるので、総合的なコストメリットがあります。2023年10月には「AC101 connect」が発表され、さらに正確な散布を実現しました。
まずは実際に「AC101」を見て欲しい
場所をお借りできれば随時「無料デモ会」を行っていますので、お気軽にお声がけください。1反ほどの敷地があれば実施いたします。